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第1章:人が増えなきゃホワイトにはなれない。でも、採用応募には誰も来なかった。

目次

ホワイトな訪問介護事業所を標ぼうして立ち上げたけれども・・・

あの頃、私たちは地獄のようなサイクルに囚われていました。 「月10日休める」「有給100%」「サービス残業ゼロ」──それは今の話。 しかし当時は真逆でした。

愛知県春日井市にあるファミーユヘルパーサービス名北 管理者の 草野淳です。どのようにして ファミーユがまともな事業所になっていったのかというお話しです。

ファミーユヘルパーサービス名北の前身、ファミーユヘルパーサービス高蔵寺は2018年11月に同じ場所でケアマネ事業所を運営していた場所で誕生しました。ケアマネ事業所との連携を深め、効率的な運営が行えると考えて新設した事業所でした。ケアマネ事業所と同様に、介護業界に蔓延るブラックな就業慣習を排除し、”まともな”事業所を作りたいと思って始めました。

それでも、一番苦しいのは、お休みを取らせてあげられないということでした。有給休暇はもちろんの事、誰かが休めば必ず穴が空いてしまう。 少人数ゆえに、スタッフは休みたくても休ませてあげれない。休ませれば利用者さんの対応が回らず、現場には疲労と焦燥が積み重なっていました。

「来週、どうしても休まないといけないんですが、だれも穴埋めができず、利用者さんに『今日は行けません』と謝るしかないんです」

その言葉には、申し訳なさと疲れ切った表情がにじんでいました。 スタッフの健康も、利用者さんの生活も、同時に守れない。そんなジレンマに、追い詰められていました。

採用を頑張っても、応募は来ない

当然採用をできるだけ頑張ろうと動きました。求人媒体を増やし、ポスティングを続け、採用イベントに行き・・・ それでも半年に採用できるのは1人いるかどうか。面接の予定がると現場がざわつくほど、“面接”自体が奇跡のようなイベントになっていました。また 、厳しい財政状態のわずかな資金を採用広告に持っていかれるという絶望的な状況でした。

M&Aという選択

「人が増えなきゃ、この苦しみは終わらない」。 私たちは思い切って資金を集め、2020年、2022年に、訪問介護事業所を買収しファミーユグループに加えました。 一緒に働く仲間が増えた時、将来は希望にあふれていました・・・・

──しかし、数だけでは解けない問題がありました。

増えたはずの“余裕”が生まれない理由

  • 記録フォーマットが事業所ごとにバラバラ
  • 連絡手段もツールも統一されていない
  • シフト調整のルールすら共有されていない

結局、「人が増えた=余裕が生まれた」は幻想でした。 バラバラの文化がそのまま持ち込まれ、運用の管理が各所で増えただけ。事業所間の人材交流なども起きようがなく、休みがとれない事業所が各所に増えただけという状態でした。

ここから始まった、仕組みの標準化という長い戦い

私たちはそこで気づきました。 「人を増やすだけではホワイト事業所は実現しない。必要なのは、数を支える“仕組み”だ」。利用者様の基本情報・手順書の標準化・訪問記録とその集計、職員への期待値、情報共有のDX化など、人員が実際に交流できる仕組みでなければならない・・・。

こうして、そこから2~3年かけた“仕組みの標準化”という長い戦いが幕を開けました。 次章では、高度にペーパーレスが進み 人員が広域に交流し、急な休み・希望休がしっかりとれるまでの事業所となった過程について お話ししていきたいと思っています。


草野淳@ファミーユグループ代表
東北大学法学部卒業。アマゾン・ミスミグループなど国内外の人事マネジャーを歴任。人事制度・評価制度の構築の他、独学でITを習得し、多くの人事関連の業務効率化を主導。関連書籍も執筆。2021年からファミーユヘルパーサービス名北の管理者兼サービス提供責任者。


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